アリガタアリミゾ もう面接触にしようよ
ずっと長い年月望遠鏡を使ってきた、というわけじゃない門外漢ですので機材の箇所箇所色んな面で驚くことがあります。まだこんなことやってんだ・・・というレトロ感といいましょうか、「え?これが現行型?」という印象を持ってしまった箇所ですね。こういうのは人間いつしか慣れてしまって、あぁ望遠鏡ではこれがデフォルトだよ、と疑問も抱かなくなってしまうのですが、そうなる前に書いておきましょう。
望遠鏡の右も左も知らない当初に名前を聞いたときは、昆虫系のなんかかな?と思ったのですが、望遠鏡と架台を接続する装置でした。
要は断面が台形のプレート(望遠鏡側)を同じ形状のメス型で挟み込んで固定する、という装置です。近似のものとして写真系では古くからクイックリリースプレートというものがありますが、国産のものはワンタッチ固定だけに特化していて固定位置のスラスト微調整はできませんでした。ビデオや超望遠の世界では前後バランスが可能なプレートタイプがあり独自規格で改良されてきましたが、小型向けではアルカスイスの規格が完璧すぎて必然的に世界基準となっています。
望遠鏡は前後バランスを取らねばいけませんので、固定位置が自在なこの方法は理にかなっています。
ところがこの固定が接触面、ココがが気になるのです。大きなネジで押さえる原始的な方法でシンプルイズベストといえば聞こえは良いですが...。押されてスライドしたプレートは受け側のテーパー面に面接触します。しかし押している側はネジの頭のみが点で接触しており、けっこうな圧力をただ一点が受け持っているわけです。写真の架台は2点ですが、1点のものも存在し当然軽量機材用なのでしょうが、どちらの場合も複雑に荷重を受け持つ部位の固定方法としては非常に原始的で危うい要素が豊富な方法です。
今の世の中でいまだに点接触で固定をしているのは、指で回す軽固定で軽荷重のモノがほとんどですので、最大積載10kgオーバーとうたっているこのレベルでこの固定方法かぁ...と、まずは思想にびっくりしました。ちなみにAVXの最大積載も少々怪しい感じがします。ただ載せることは可能でしょうが、精度も調子もよく稼働させるのはせいぜい7~8kg以下くらいじゃないでしょうか。
物の道理として鉄vsアルミですので当然けっこうな跡が残ります。
アップで撮るとけっこうな食いつき跡です。望遠鏡は高価な代物ですので脱落や落下など一番注意せねばなりません、そこで人間としてどうしても強めに締めることになります。まさか専用トルクレンチなどあるわけじゃないので、だいたいこのくらいだろう、という感覚で締めます。人の感覚ですのでトルクの値は使う人の気分や使用環境・状況などで千差万別となります。
固定痕跡ですのでしょうがないのですが、傷がつくのもどちらかといえば正直イヤですね。特にこういう打痕に似たような痕跡というのは原始的で少しレトロ感溢れ、時代として半世紀以上遅れている感がします。
がんばってポジティブに考えると昔のローレットネジ固定(位置が決められている場合)のように、軸側(受け手側)に穴加工をした方がネジ固定の場合は逆にスマートなんじゃないかとも思ったりします。つまりプレートにダダダダダダーと最初から穴が数ミリ間隔で開いているわけですね。無段階ボリュームとクリックボリュームの違いに似ています。案外クリック10段階とかの方が位置再現性が高く使い良かったりする場合もあったりしますから。
とはいえ、いつまでもネジ直接固定で痕跡残していたら少し恥ずかしい時代になってきているのは誰しも感じていることでしょう。大きな傷がつくのがわかっている箇所なのに色鮮やかなアルマイトのプレートなどは失笑よりも根本改革をせずに見栄えや印象を少しでも...という精一杯感がひしひし伝わってきてなんだか悲哀すら感じます。削りだし、高精度、アルマイト加工とプレートががんばっているのだから、マウントも石器時代から抜け出さねば釣り合いがとれないんじゃないでしょうか。
高級小物パーツメーカーからは出ていましたが、CELESTRONの最近の上級架台にはロスマンディとビクセンの規格のツインOKで面接触固定という理想的なマウントが装備されるようになりました。超ハイエンドの方はそもそもCELESTRONはセレクト段階で浮かばないでしょうし、一般的観望にはこれがあれば全く問題ないでしょう。
いずれこの形状が各メーカー中級~上級架台のデフォルトになり、この形状でビクセン規格だけというのも初級~中級に普及させるべきでしょう。