なにわのアルゴ座

星見が好きな大阪のおっちゃんのブログです

スカイメモS(Star Adventurer - SkyWatcher)内部

 経緯台の初心者向け望遠鏡セットで星がかなり早く視界から消えていく、ということを経験しましたので、CELESTRONのAVXという赤道儀を買いました。買いましたとあっさり書いていますが使ったこともない、操作も知らない、ましてや実際に見て触って選ぶこともなかなかできないものを買うのでけっこう悩んでのことです。箱の巨大さなどから当初はすごいものを買ってしまった感がとても強かったのですが、赤道儀のレベルとすれば非常に安価でどうも人により評価はマチマチのようです。ですが10万円以下で買える赤道儀としてはしっかりとして悪くはない赤道儀だと思います、色んな意味で。しかしこれ「今日は空がキレイだからちょっと見ようか」という「ちょい見」したい時には少し重すぎてゴツすぎるのです。で、簡易赤道儀としてスカイメモSを入手してしまいました、どんどん機材が増えていくのは写真系と同じ現象です。

AVXがあるのでGOTO要らないが星は追って欲しい。そこそこの筒や機材には耐えて欲しい。そこそこしっかりしてて欲しいが持ち運びも簡単で設置も面倒に思わないのが良い、けっこう勝手千万なニーズですよね。客というのは昔から勝手ばっかり言いますのでメーカーもたいへんだろうと思います。

名前がスカイメモとあっても現行のはスカイウォッチャーのOEMで中華製です。見た目も何か怪しいですが触っても怪しさいっぱいです、箇所箇所で「え?これでデフォ?」という疑問がたくさん自然発生してしまう商品です。

 

さて、内部としてはどうなのでしょう。

使い勝手や実際の操作や結果インプレなどは既にあれこれと他の方の記事がたくさんあるでしょうから、僕は掃除がてら興味もあり内部を写真に撮ったので記事にしてみます。

 

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いきなり殻割りしていますが、モノコックボディとなっているようで底カバーを開ければあっさりと心臓部に到達します。屈強とは全く言えない3/8ネジ穴のある底カバー部分だけで全ての重さを受け止めるので、搭載重量としては少し盛っているような印象を受けます。(というか耐荷重と精度の面でほんとに心配になります)

 

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ウォームのハウジング部はモーター部と一体となっています。

 

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右のピニオンを含めて3つのギアで駆動されますが、真中のアイドラーギアの公差がひどく悪く、この状態で指でつつくとゴソゴソです。遊び調整する長穴などはありません。これで大丈夫なのか?という印象を受けます。例えて言えば昔ジャンボマシンダー(だったか)という男の子用の大きなおもちゃがありましたが、その手の部分を差し替えて電動機銃のようなものに換装できたりするんですが、その内部のプラ製のギアが同じようなガサゴソの噛合のギアでした(変な思い出し方で余計にわかりにくいですが)。

スカイメモSは表の操作面で矢印ボタンが2つあり、これを押すとx12で微動の変わりになります。覗きながら押すと向きによっては1-2秒経ってから動きはじめるというレスポンスの悪さが当初から不思議でした。星の進行方向にはすぐに反応しますが、星とは反対方向に押したときボタンの接触が悪いのかと勘違いするほどレスポンスが遅いのです。この原因はこの大いなる遊びのせいなのでしょうね。工業製品として納得するポイントではありませんが、事象の源として納得しました。

この遊ぶ度合いはもはやギアのバックラッシュというようなものではなく、軸とアイドラギア間のガクガクのゆるゆる度合いが生じさせるもので、それに更に両方へのギアへのバックラッシュが加わっての結果が目指体感できるというわけでしょう。もし日本生産でこういうのを出していたら、ものすごいバッシングを浴びて会社自体駆逐されてしまうかもしれないなぁと思います。

 

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裏蓋には中華の躍進の源となる基盤。コンパクトにまとまっていて、ケーブル類もやっつけ感はさほど感じられません。チップが何かとか、そういう詳しいことはわかりません。

 

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ウォームホイルをもう外していますが、その作業の際に気がついたのがグリスの付け過ぎによる各部への飛散です。これをバラす前に極軸望遠鏡のスケールのセンタリングを調整している時に内部でスケールが外れてしまい、極軸望遠鏡を半分解することになったのですが、その際の分解時にもグリスのTOO MUCHさに少し眉をひそめてしまったことを思い出します。光学系へのグリスアップは必要最小限というさじ加減を工員全員が共有する言語や概念が中国では存在しないのかもしれません。

 

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ウォームホイル。機械的精度はわかりませんが、悪くない印象です。もちろんブラシで洗浄清掃して新しいグリスで気持ちよく仕上げます。

 

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こちらがウォームホイルのスラストベアリング、ロックリングを締めたときにその力を受け止めたり、少し緩ませるとスルスルと動くのはここが担当しています。

シュミカセのC6などでけっこう公称限界近い負荷をかけて使っているのですが嫌な打痕も無いので清掃してグリスアップします。

写真撮影くらいの機材重量であればロックリングをそれなりにキュ!っと締めるとロックされますが、記載限界的な5kgに迫るような望遠鏡をのせて簡易赤道儀として使う場合は思いきりパワーをかけてロックしないとちょっと触るだけでスルーっと動いてしまいどうもいけません。これは本家スカイウォッチャー社でも、「緩む?滑る?じゃあもっとリングを締めまくってくれ」という原始的正式回答がありますので躊躇することなくフルパワーで締めます。それをそこそこやった個体の分解結果ですのでさほど心配することは無いようです。

ただし形状的に緩ませる方向へのパワーのかけ方がとてもやりにくいので、撤収するときに「ふんっ!、、ふんぬっ!!!....ゆ、ゆるまん!」ということも少なくありません。

 

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で、内部で発見したのがこの黒欠片。なんだろう??とよく見てみますとパンチ穴のゴミみたいに見えます。ですがこれ、金属片でした。金属というのはコワイです。イヤですね。もし内燃機だったら一発アウトです。

さて出処はどこだろう。。

 

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あ~、似たような形状のものを発見しました。怪しさ満点です。

 

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この矢印の部分ですね。バリが沢山あります。この一部の大きく薄いものが使用中に折れて落ちたのでしょう。非常に嫌な仕上げと雑い管理です。というか鋳抜きの後の処理を端折ったり、そもそも完品検査とかの概念が無いのでしょう。

ここはウォームホイルが使用中グルグルと回転する心臓部なのですが、下側の長方形の部位は電池カバーの爪。

海や山でのアウトドア使用が多いのに電池蓋を開けると心臓部が外部とツーツーなのですね。こういう構造はできるだけ砂やホコリを自衛自覚しておかないと、ユーザーが自機を知らずに壊すことになります。

造りをどーのこーの言ってもしょうがないので、こういう構造だと知ってそれをどう使うかという意識でいかないといけません。

ちなみに円形のバリは全て除去しました。これがウォームに万が一ハマってしまうともともと精度うんぬんの製品でもなさそうなのに、もっとどうしようもないことになってしまいます。

 

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もうひとつ、モーターハウジングのサイドのヘックス穴が、何やら見たことのない形状になっているので、次は何だ何だ?的によくよくみてみますと....

 

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あはは、、、すごいもの出てきたわ。。。

 

 

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切削片でした。。あーあぁ、もう。。

 

 

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このスプリングボール(名前はこれで合ってるかわかりません)はモーターハウジングを押さえる役目をしているようです。ガッチリと固定せずにある程度の締め具合で、あとはこれ、裏蓋を装着すれば自動的にテンションがかかると・・・

 

それでいいの?(笑)ダイジョブなの??

 

という具合に、いろーいろな疑問がわきまくって、ツッコミどころ満載のスカイメモSです。

しかしそれでも十分に普通にチョイ見観測では大活躍です。

諸元にはピリオデックモーションがいくらだとか書いていますが、そういうことを他機と比較するような個体では無いということがなんとなくわかるかと思います。すごいことにオートガイダー端子までありますが、さてはて、こんなものに(失礼)ガイダーまでつけて....とも感じます。ただ逆に、ガイダーつけたらものすごく激変して強烈なパフォーマンスを発揮するのかもしれません。

でも、そこまでするのもまたどうかとも思うのでしたことはありません。

 

電池4本で動くのでややこしいこともなく、精度はともかくただ星を追尾してくれるという単機能だけでいえば(眼視)非常に手軽な機械でありがたい機械です。

他社とのアドバンテージである標準搭載極軸望遠鏡も購入当初からセンターが狂っており、イモネジでスケールの芯出しをしないといけません。

シンプルに1軸ドライブでまぁまぁ使えるという製品が他にあまりないというのも不思議なことです。ニーズが無いのでしょうかそれともそこそこの値段となるので、どうせなら赤道儀いっとくか、となるのでしょうか。

 

ディスりまくってる印象を持つかもしれませんが、極軸をあわせると十分に追尾しますし撮影もしっかりとこなしてくれます(出来栄えは人それぞれですが)。

ただ、この程度のレベルで定価が5万円、実売35000円もするということから、用途によっては中古のGPやポラリス、ミザールSPに1軸ドライブつけたほうが遥かに良いケースも多々あるかもしれません。

日本製で精度を皆が納得するようなものを作れば、ポタ赤でも一気に10万オーバーし、それが人気になるのも妙に納得するようになりました。

 

こんなものですが(重ねて失礼)、無いよりはある方が非常に幸せになります。そりゃもっと精度がよく構造的にも納得がいく良いものが同価格帯であれば嬉しいですが。

とにかくチョイ見には楽ちんで手軽です。これに足りないのは「強度」「しっかり度」「精密感」で、一番欠けているのが「所有満足感」でしょうか。嗜好製品としては全く価値がありませんが、実用面ではけっこう使えます。

もし購入をお考えの場合は、是非実機を手にとって納得されてから決めた方が良いと思います。ケースによってはポラリエの方が良い場合も多いでしょうし。